二重山稜(にじゅうさんりょう)
二重山稜とは、二つの稜線が平行して走っている場所のことであり、二つの稜線の間はくぼ地が形成されるので線状凹地、船くぼ、雪くぼとも呼ばれる。
この二重山稜はもともとひとつの山稜であったが、重力によって山稜付近に正断層が形成され、この断層に沿って尾根がズレ落ちることで、もともとの山稜と、ズレ落ちた山稜と二重稜線が形成されるのである。山稜付近に正断層が形成される理由は、氷河期時代の名残であり、氷河期が終わって今まで山体を覆っていた氷河が消滅し、それまで上に氷という重石(おもし)があった山は軽くなるとともに、崩れやすくなるのである。
また、他の要因は、山体の隆起によって、山頂部分が耐えきれず崩落したものもある。北アルプスや南アルプスにも二重山稜がところどころ見られる。南アルプスの間ノ岳の南稜にも二重山稜があるが、これは山体の隆起による陥没と言われている。陥没以前の間ノ岳は標高が現在よりも数十メートル高かったと言われている。
その当時はまだ富士山は形成されていなかったという。(富士山は高山帯付近の植生がアルプスの高山と異なることから、氷河期以降に形成された新しい山と言われている。)なお、二重山稜の間のくぼ地は、風避けにもなり、雪田ができることもある。ただ、この二重山稜は、視界不良時には道迷いの原因になりやすく、過去に遭難者を出しているところもある。