最低賃金法ってどんな法律?
法律上、労働者と雇主の関係は、「対等」です。労働者は労務を提供する義務を負い、代わりに賃金を受け取る権利を持っています。雇主は労働者に賃金を払う義務と引き換えに、労務提供を受ける権利をもっているといえます。
しかし、実際の労使関係の現場では、どうしても賃金を払う側である雇主の方が、経済力が強いという現実があります。そのため、歴史上、しばしば、労働者が雇い主の理不尽な請求を飲まざるを得なくなったり、強制労働などの望ましくない状況が繰り返し起こってきました。
また、賃金については、支払う側である雇主が、労働の対価の価値を決めることができる権限を持っています。もし、これが雇主側の都合だけを優先して決められることになると大変です。重労働に見合わない金額の賃金しか払わないとか、雇主の身内など、都合の良い人には高い賃金を払い、真面目に働いている他の労働者はスズメの涙の賃金、といった不公平が生じる恐れがあります。労働者の多くは賃金に頼って生計を立てているのですから、労働に見合った正当な賃金を受け取る権利が保障されないと、生活を脅かされてしまいます。
そこで、国は、最低賃金を定めることで、労働者に対して、雇主が払うべき賃金の最低水準を定めることで、労働者の賃金を受け取る権利を保障し、労働者と雇主の力関係が、過度に理不尽なものにならないように、歯止めをかけているのです。
さらに、最低賃金が決まっているれば、「あんなに働いてこれっぽっち。」といった状況で労働意欲を低下させてしまう恐れや、雇主側だけに富の不均衡が生じることも予防する役割があるんですね。
最低賃金は、各都道府県ごとに定められています。これは、地域事情によって、経済活動にはバラつきがあり、適切と考えられる賃金の金額も自然と違ってくるためです。業種によっても差があり、労働内容に沿って、細かく決まっています。各都道府県ごとの最低賃金は、各都道府県の労働局から、公共職業安定所(ハローワーク)をはじめとする関係省庁に伝達されます。
実際の雇主が自分勝手に最低賃金を下回る雇用契約を提示して、労働者側が同意をしていたとしても、その契約は無効とされます。法律に反した契約ですから、雇主側は差額の不足分を労働者側に払う義務が課せられます。