日々の残業時間の端数を切り捨てるのは違法?
労働時間を毎日記録するのがタイムカード。よーく見てみると、日々の打刻時間は少しづつ違いますね。これが残業となると、きっちり定刻が決まっている訳じゃありませんから、分単位の端数が出てきてしまいます。「これをイチイチ足したり引いたりするのは面倒だから、四捨五入しちゃいましょう!」と考えたくなってしまいますよね。
「でも、四捨五入されたら、4分以下は全部ゼロですよ!?毎日4分ずつ25日分だったとしたら、100分。つまり1時間40分分がカットされちゃうんじゃないですか!?」
ハイ、その通りですね。計算が面倒だからと言って、たとえ1日数分でも勝手に切り捨てを行うことは、賃金支払いの大原則である「全額支払いの原則」に反することになってしまいます。
そこは、法律の方も抜かりはありません。日々の労働時間を四捨五入、切り捨てで端数処理をすることは法律上禁止されています。これを行ってしまうと、労働者にとっての不利益が大きいことがはっきりしていますし、悪意を持って雇主側にとってだけ有利な労働時間計算に利用される恐れが多分にあります。
従って、日々の労働時間の端数は原則としては、合算して計上することになります。
その上で、1か月分を合算して端数が生じたときに関しては、端数処理を行っても良い、という規定になっています。これも、条件があり、
@1か月の労働時間の合計時間数について、30分未満の端数を切り捨て、30分以上の端数を切り上げ処理すること
A時間給、割増賃金について、50銭(=0.5円)未満を切り捨て、50銭以上を切り上げること
B1か月における割増賃金計算(時間外手当、休日出勤手当、深夜労働手当など)について、50銭未満の端数をAと同じく処理すること
だけが認められています。これで分かる通り、労働者にとって不利益になる端数処理は法律上禁止されており、違法、不法な端数処理が行われることのないようになっているのです。