残業代を月に20時間分までしか払わないのは違法
毎日のように残業をしていて、その合計は20時間を大幅にオーバーしてしまっている。それなのに、上司からは、「残業は20時間までしか払わないから。」と言われてしまった!働いている時間は本当はもっと長いし、タイムカードだって、そうなっているのに、払わないのは違法じゃないの?こんな事例、大変困ったことに少なくありません。
こういう事例の場合、しばしば、雇用契約書などでも残業代の上限20時間などが書き込まれていることがあるようです。働いている側にしたら、「納得できないけれど、サインしてしまったから…」と、泣き寝入りしてしまうことが多いようです。雇主の方も「雇用契約に書いてあるでしょ?あなたも入社の時に納得したからサインしたんでしょ?」と押しが強いケースもしばしば聞かれます。
しかし、これは、非常に悪質な違法行為に当たります。そもそも「働かせているのに払わない」ということそのものが、違法ですから、残業代は仕事をした分だけ、きっちり支払ってもらわなくてはなりません。
「でも、雇用契約に書いてあるし、こっちも同意したんだから、その契約そのものは有効なんじゃないの?」そんな疑問が出てきそうでですね。これは、労働基準法の「強行規定」と「任意規定」を知らないことで起こる誤解です。労働基準法を含め、法律には、「当事者(この場合は雇主と労働者)の間で話し合いによって自由に決めて良い規定」=任意規定と、「何が何でも法律を守らなくてはならない規定」=強行規定の2種類があります。残業代に関する取り決めは強行規定になっていますから、後で当事者間で残業代の上限を決める契約を交わしたとしても、その内容は無効とされる、ということなんですね。
法律上、働かせた分は、払わなくてはなりません、という原則がある以上、それに反する契約は、契約書そのものの有効性とは別に、雇主は強制的に守らされる規定になっているのです。