派遣社員には残業代なしってこれって違法じゃないの?
残業代(時間外手当)の計算について、ややこしいのは派遣労働者の場合です。なぜなら、派遣労働者は「労働者派遣法」という別の法律があり、時間外労働についても、こちらの規定が適用されるからです。
「派遣先で残業を言い渡されて仕事をしたのに、明細を見たら時間外手当の割増がなくて、フツーの給料で計算されていた。これって、残業カットされているんじゃないの?」
「契約で残業代の話になった時、「7.5時間を超えてから残業代がつきます。」って言われた。これってどういうこと?」
なんて話が持ち上がったときは、法定労働時間との関係を見返してみなくてはなりません。法律上、1日の労働時間は8時間なのですが、8時間働く場合、途中に45分の休憩を入れなければならない、と決められています。ですから、7.5時間というのは、この規定に照らして、「法定労働時間を越えなければ、残業(時間外労働)とはみなしませんよ。」といっているのであって、この場合は違法ではありません。
けれども、もし、
「同じ仕事をしているんだから、派遣労働者も正社員と同じようにサービス残業してくれ。」
というのであれば、話は全く違います。
そもそもサービス残業の指示自体が問題であるばかりでなく、派遣労働者と、その他の直接雇用されている労働者とでは全く雇用契約の内容が違うのです。時給いくらで働いている派遣社員は、派遣元との契約で、賃金をもらう立場です。仕事の指揮命令は派遣先の担当者が出すにしても、その他の待遇については、派遣労働者の方が不利な状況に置かれています。
そもそも、直接雇用せずに派遣社員を利用するということは人件費削減のコストカットが大きな理由ですから、通常は派遣社員の方が賃金も低く設定されています。仕事内容は正規雇用と代わりなかったとしても、時給の点では大きな差もあるのです。年金や健保などの社会保障や、雇用の期間など、ただでさえ労働条件は低いのに、
「賃金は下げて、仕事は正社員と同じようにしてほしい。」
というのは認められません。
このような場合は、派遣元にも事情を説明して、適正な労働者派遣が行われるよう調整をしてもらうような努力も必要です。もちろん、このような場合は、残業した分の労働時間は賃金支払いの対象になります。