懲戒処分の基本原則に二重処分禁止の原則がある
懲戒は、企業秩序を乱す労働者の行為に対して、制裁を与える意味で行われる処分です。過去の裁判の判例では、雇主(会社)にとって、懲戒処分を行うことは、雇用契約を結ぶことで、当然に懲戒を行う権利が発生すると判断されています。
しかしながら、もともと、労働者の経済生活の基礎を握っているのが雇主であるため、労働者と雇主の力関係は、どうあっても雇主の方が強いという基本的な状況があります。このうえ、更に懲戒を行う権限がある、ということは、一歩間違うと、雇主がその権利を濫用して、労働者の労働環境を必要以上に厳しく困難なものにする恐れがあります。そこで、労働基準法では、懲戒処分についてたくさんの細かいルールを定めています。
「二重処分禁止の原則」とは、こうした懲戒が労働者にとって過重で理不尽なものにならないためのルールの一つです。
「二重処分」とは、労働者が行った問題行為について、一度処分を下したにもかかわらず、同じ問題行為について、再度過去にさかのぼって、処分を科すこと、を言います。
ものすごくシンプルな表現をするのなら、「一度詫びて、いいよ、と許したはずのことを、蒸し返してまた、処分をする。」ということ。一度は懲戒処分で終了したはずのことを、またまた蒸し返すというのは、いかにも理不尽なことでもあり、労働者側からしたら、「いつまで処分が続くの!?」という状況になります。終わったはずの話を何度となく蒸し返してはその度に制裁を与えられるとなってしまったら、労働者は安心して働いていられません。労働基準法では「1つの行為に処分は1回だけ」と決めているのです。
懲戒処分の内容が、労働者の行った行為との内容が、あまりにアンバランスではいけない、とされていて、更に、たとえ懲戒性分が労働者の行った行為に相応だと思われる程度であっても、必ず弁明のチャンスも与えなくてはいけない、という決まりもあります。