減給制裁の限度額
就業規則によって適切な判断基準が設けられていて、労働者に対する周知も行われており、就業規則で定めた減給規定に当てはまる場合、雇主は労働者に対して懲戒の意味での減給を行うことが出来ます。
とはいえ、給料が減ってしまうことは労働者にとっては、生活に直結する出来事です。元来、労働者は雇主側から受け取る賃金が経済的な支えのすべてとなっていますから、極端な減給をされることはそのまま、労働者の生活を逼迫させることにつながります。また、雇主側にしても、減給規定があるからと言って労働者の責めに帰すべきでない内容までを理不尽な理由をこじつけて減給することは職権乱用に当たり、許すべきではありません。
そうした点から、労働基準法では、懲戒処分としての減給について一定の制限を設けることで、労働者の生活を守り、雇主が自己都合で減給規定を悪用することがないようにガイドラインを作っています。
労働基準法91条による法律上の減給の上限は、1回の処罰について、1日の平均賃金の半額までとなっていて、それ以上の金額を罰金として徴収することは労働基準法違反に当たり、無効になります。
もしも、給料の支払い期間(1賃金支払い期間)に複数回の減給の原因に当たることがあった場合は、「減給金額の総額は、賃金総額の10分の一を超えてはいけない」という決まりも一緒に定めています。このときに計算の基礎になる賃金の金額は減給後の実際に支払われるべき金額の10分の一です。こうすることで、減給の上限をより小さく設定して、基準を厳しくしています。
例えば、25日締めの賃金支払いを決めているときは、前月26日から今月の25日までの期間中に、複数回の減給事由があったときは、その合計金額は、給料金額の10分の一に収まっていなければいけません。
こうすることで、減給が労働者の生存を脅かすような過剰な負担になるのを予防するとともに、雇主側の故意によって、理不尽で身勝手な減給の濫用が起こらないようにする、両方の、目的を果たしているのです。