請求すれば妊娠中は軽い業務に換えてもらえる
女性にとって、「ママになること」は人生の内でも特別な時間です。少子高齢化が進む日本の社会からしてみても、新しい命の誕生は大歓迎したいところです。
とはいっても、妊娠中は、非妊娠時に比べて女性の心身にかかる負担は非常に大きくなります。働く妊婦さんのために、労働法では、妊娠中の心身の負担を軽減して、「安心して産み、育てることのできる職場の環境」を整える方策を講じています。その一つが、産前産後休暇であり、もう一つが「妊娠中の業務の軽減措置」です。
妊娠期間を通じて、女性の体は急激に変化します。特に、妊娠初期と言われる妊娠直後から妊娠3か月(11週)までは、胎盤が未完成で妊娠状態が非常に不安定な時期。この時期の無理は流産につながるおそれがあります。つわりの激しいひとは、食事がとれなくて辛いこともあります。
安定期とも呼ばれる妊娠中期になると、胎児の状態は安定する代わり、お腹は急激にどんどん大きくなっていきます。妊娠後期に入ると、こんどは大きくなったお腹を支えながら生活していくため、腰から下の下半身にかかる負担が大きくなり、腰痛や疲労、静脈瘤が起こりやすくなることでしられています。胎児に栄養を取られることで貧血が起こりやすくなるのもこの時期です。
このように、ただ普通に生活しているだけでも母体の負担が大きい妊娠中は、胎児の成長のために、精神的な安定も大切です。妊婦さんは、できるだけ、ゆったり過ごすことが良いと言われているのもそのためです。
これらの妊婦特有の事情を考慮して、妊娠期間中の仕事の内容が、妊婦さんの健康にとって良くないときは、医師の指導に基づいた請求によって軽い業務に換えてもらうことができる決まりが作られています。
そのほか、妊娠中に混雑した電車に乗ることは、思わぬ事故につながる恐れもあることから、混雑時を避けての時差出勤すること、作業中に、適度な休憩をとることなども、妊娠している労働者に特有の事情として認められています。