退職時に未消化の年休権買い上げは違法ではない
使い切ろうと思っても、なかなか使い切れないのが有給休暇です。特に、退職間際になって、有給が残っているのが分かっていても、ついつい取りそびれてたくさんの使い残しが発生してしまうのが珍しくありません。そのまま退職してしまえば、まったく役に立たないまま、ということになってしまいます。もったいないですね。
労働基準法では、退職間際に限っては、有給休暇の時季を変えてもらうように労働者に頼む「有給休暇の時季変更権」を行使できない、という決まりになっています。ですから、言い換えると、退職間際こそ、本来的には溜めに溜めた有給を一気に使い切ってしまうべきです。しばしば、「業務に差し障りはあるし、引き継ぎもしてもらわないと」なんて言われたりしますが、それはそれ、これはこれ。使い残しても、退職すれば意味をなさなくなる有給ですから、極力、この時点でも消化してしまう方が良いのです。とはいっても、長年お世話になった会社だと、そういうことも言いづらいですね。
「使い残した有給休暇は、現金化できないの?」という質問もしばしば見かけます。退職以前の労働契約が継続している状況では、これは違法に当たり、有給休暇を会社が現金買取することは認められていません。なぜなら、有給休暇は、労働者の権利として、行使することが認められているものであって、それを買い取ることは「労働をするべき日に、労働を免除する」という有給休暇の主旨に反しているからです。同時に、雇主は、法律で定められた有給休暇の年間付与日数を勝手に減らすことは認められていません。
しかしながら、退職間際の場合、勤務日数との兼ね合いでそれ以上有給休暇が取れないという時は、話は別です。会社が有給休暇の買取を行うことは、労働者が有給を消化しきれないことを救済するための処置として、労働者に不利益を与えないことが目的と解釈されるからです。これは、違法というよりも、会社が好意で行っていることですから、違法性を問われることはありません。