退職金制度がある会社なのに退職金を払わないのは違法
長い勤務を終えて、円満退職することになりました。イザ、辞める時になって「ウチは退職金規定がないから、退職金は出ないよ。」と言われてビックリ!「10年以上も務めてきたのに、退職金が無い、だなんて!これは違法じゃないのか!?」とお怒りになる向きもあるようです。
ところが、これは、一概に違法とは言えません。退職金は、他の、給料や手当とは少し違った賃金になるからです。
法律上は、どのようになっているでしょうか?
退職金は、労働基準法上「支払わなければならない」とは書かれていません。労働者が受け取る賃金の中で、退職金は、「払わなければならない」という規定のない賃金なのです。そして、労働基準法86条では、会社が退職金を支払う規定を設ける場合、就業規則に退職金規定を制定しなければならない、と定めています。つまり、退職金規定がなく、就業規則にもその記載がない場合は、退職金を払ってもらえなくても仕方がないのです。「こんなに長いこと働いてきたのに、退職金もないの!?」と、驚いてしまうかもしれませんが、前述のように、「払わなくてはいけないわけではない」賃金ですから、規定がない以上、払わなくても法律上は問題はありません。
それでは、退職金規定が雇用契約書や就業規則にある場合はどうでしょうか?
この場合は、「払う」という約束が労働者と雇主との間に成立しているので、払わないことは違法に当ります。「約束してあるんだから、払ってちょうだい。」ということですね。もし、会社の都合で一方的に払ってもらえないという事態が起こった場合は、当然に請求をすべきでしょうし、それでも会社側が応じてくれないという場合は、労働基準監督署に相談して支払うよう指導してもらうということもできます。
これは、あくまでも就業規則に退職金規定があることが前提になります。もしも、「退職金があるはずなのに、払ってもらえていない。」という場合は、まず、就業規則がどうなっているかを改めて確認してみましょう。就業規則が無い時で、、事業所規模が、常時10人以上の人を雇っている場合は、この「就業規則が無い」ということが違法に当たります。
ところで、退職金は「払わなくてはならない賃金ではない」のですが、同時に「払ってはいけない」という訳ではありません。ですから、雇主が長期間の勤務に感謝の意味を込めて退職金を払うことは制限されているわけではないのです。