退職を強く働きかける退職強要は違法
リストラ、肩たたきなど、会社が生き延びるために人員削減を行うのが当たり前になっている近年、大きな社会問題でありながら、なかなか、減らないのが「退職勧奨」という問題です。
退職勧奨とは、文字通り「退職を勧めること」で、これ自体は、違法ではありません。しかし、近年、過剰な退職勧奨を行う事例が増えてきており、こちらを退職勧奨と区別して「退職強要」と呼んでいます。退職強要は、「退職する意思のない労働者に対して、強引な手法で退職をするよう強く迫ること」を指しています。
退職勧奨は、あくまでも「勧め」であって、労働者には応じる義務はありません。勤務を続けたいと希望しているのであれば断る自由はあり、応じるか応じないかの選択は労働者側の自由意思に任されています。
ところが、この労働者側の自由意思を侵害して、心身ともに過剰な負担を感じさせるような方法や、執拗な手法によって労働者を困窮させて、「退職勧奨に応じざるを得ない」というような状態に追い込んで退職届を出させたような場合は、不法行為として退職は無効、民事上の損害賠償請求の対象となるケースもあります。
具体的には、「労働者を一室に軟禁して、退職届を書くように複数の人物が取り囲んで執拗に説得する」「特定の人物を、数十回に渡って「面談」し、その度に退職をせまる」「大声で悪口雑言を浴びせたり、業務遂行能力について事実無根の低い評価を下すなど、労働者の人格を傷つけるような言葉を頻繁に投げかける」「労働者の住んでいる家にまで出向いたり、電話やメールなどの方法を使って、退職を要求する」「労働者の家族に退職するよう説得を頼む」「退職の説得中に、労働者の座っている椅子を足でける、机をたたくなど、威圧的な行動をとる」などが上げられます。もちろん、労働者の服をつかむ、体をゆするなどを行った場合、刑法上の暴行罪や脅迫罪に当たるときもあります。退職勧奨に応じないことを理由にパワハラを行うのも、退職強要とみなされます。