5分の遅刻で30分の賃金カットは違法
労働基準法では、ノーワーク・ノーペイの原則、と呼ばれる基準を設けています。これは、簡単に言えば、「働かざる者食うべからず」ということ。仕事をしていない時間までは、たとえ雇主と言っても、賃金を払う義務はないよ、ということです。ですから、休日の場合は、当然に払う必要はありませんし、育児休暇中なども、賃金を払わなくてはいけない、という決まりは設けられていません。(会社の方針として、賃金を出すことも禁止はされていません)休んでいるのに賃金を払わなくてはならない例外は、有給休暇だけです。
では、遅刻の場合は?というと、「働かなかった分」については、払わなくても構わない、ということになります。仕事をしていないのですから、これは当然といえますが…会社によっては、「5分遅刻したら、30分の賃金カット」なんてペナルティーを設けているところも多いようです。
これ、単に会社の社長や、人事部長の一存で行われていたら、きっぱりはっきり、違法です。なぜなら、働いていない時間は5分間だけなのですから、残りの25分は平常通りの勤務を行っているから。労働しているにもかかわらず、明確な理由もなく、勝手に賃金カットをすることはできません。
もし、制裁措置としての賃金カットを行うのであれば、就業規則として、減給規定を定めておく必要があります。この、減給規定についても、一定の合理性や法律との適合性が必要です。制裁措置として減給規定を設けるのは、「悪質と思われる勤務態度」について反省を促し、あるいは、良好な業務遂行を行ってもらうためのもの。適切な連絡や、遅刻後のフォローなど、必要な措置を取った場合や、本人に責任のない交通機関の遅延や天変地異による障害についてまで、「遅刻は遅刻」と、労働者本人にすべての責任を担わせるのは職権乱用と言えるでしょう。制裁としての減給規定を設けるのであれば、その理由と運用方法は合理的でなければなりません。