フレックスタイム制と裁量労働制の違い
出勤時間のラッシュ地獄、アフターファイブの時間帯に接待など、日本独自のビジネススタイルは時々欧米諸国から見ると、とても不思議に思えるようです。満員電車に乗っていて押された拍子に怪我をした、なんてことは日本独自の事情と言えるようで、特に欧米文化の中からは、驚きの目をもってみられるもののようです。
どう見えるかは別にして、日本の企業にとって労働者の過重労働や、残業の超過は困りますし、労働者から見れば、ラッシュの通勤で通勤災害に見舞われたり、サービス残業をせざるを得ない状況は、お互いに歓迎したくないものです。こういった、問題を解決する糸口として採用されているのが、フレックスタイム制や裁量労働制です。両者は、「従来型の、定時出勤、定時退社ではない」という点では同じであるため、しばしば、混同されて理解されがちです。しかし、両社は違う仕組みによるもので、その内実はかなり違います。
フレックスタイム制では「この時間帯は、必ず事業所に居ること」と決められた時間があります。「コアタイム」と呼ばれるこうした時間は、裁量労働制にはありません。
フレックスタイム制では、この「コアタイム」を挟んで、前後の時間帯に流動的な労働時間があります。コアタイムギリギリに出勤してもOKですし、コアタイムより前に出勤してきても構いません。しかし、1日の労働時間の長さは決められていて、所定労働時間を労働することは求められています。対する裁量労働制では、1日の労働時間の縛りも、出退勤の時間の決まりもありません。裁量労働制では、文字通り、1日何時間働くか、何時に出勤してきて何時に帰るか?そのすべてを労働者自身の「裁量」に一任するため、こうしたルールとなっています。しかし、裁量労働制と、通常の労働制を混在させている場合は、裁量労働制の時間と、通常の勤務の両方をそれぞれ分けて時間計上する形をとっています。
たとえば、会社の営業などで、自宅から取引先に直行した時間から会社に着くまでは、裁量労働の時間、会社で報告書を書き上司とミーティングをしている時間は、通常労働の時間、というように業務内容と指揮監督の有無にあわせて両方が混在するケースもあります。
また、フレックスタイム制では、時間外手当や深夜手当は存在しますし、要件を満たすときは、当然に支給の対象となります。しかし、裁量労働制では、何時間働いても残業手当はありません。