解雇予告手当を支払わなくてもできる即時解雇

解雇予告手当を支払わなくてもできる即時解雇

解雇とは、平たく言えば「クビ切り」、つまり、雇主が労働者をクビにすることです。解雇は賃金収入で生計を立てている労働者にとっては非常に大きな影響を与えることになるため、労働基準法では解雇について、正当な理由の存在と、「30日前の解雇予告」または「解雇予告手当の支払い」を義務付けることで、雇主の横暴や身勝手の解雇がないように、制限を設けています。ですから、「明日から来なくていい」方式の解雇は、原則的にはできないようになっています。

しかしながら、この原則にも例外があって、ごく、限られた場合に相当するときだけは、その場で解雇を決定し、解雇予告手当も支払いの必要もない解雇があります。それが即時解雇と言われるものです。

即時解雇が認められるのは、大きく2つの状況があります。

@天災、事変などのやむを得ない事情で事業継続が難しくなった場合
例えば、阪神淡路大震災、東日本大震災のような、大規模で重大な天変地異によって、事業所や事業主が被災し、事業が立ち行かない状況にあれば、仕事も給料も与えることができません。また、戦争勃発などで同様なことが起きたときも同様です。このような場合は、やむを得ない状況として、即時解雇が認められています。

A労働者側に重大な過失や違反があったとき
例えば、労働者が犯罪などの違法、不法、反社会的な行動を行って、逮捕された場合などがこれに当たります。同様に、犯罪にはならなくても、会社に対して背信行為(産業スパイ、横領など)を行ったとき、会社の信用を著しく落とすような重大な過失があった場合なども、即時解雇の対象になります。これらは、懲戒解雇と呼ばれることもあります。

即時解雇の場合、解雇予告手当の支払い義務はありません。ただし、解雇に至るまでの時点で確定している賃金の支払いや、預かっている金品などの返還については雇主側に応じる義務があります。